山には山岳ガイド、街には住宅ガイド?

山に山岳ガイド

山に山岳ガイド、街に住宅ガイド?

かれこれ、35年近く、通っている床屋さんがある。

 

そこのマスターは同年生まれ。
今も独身だ。
中肉中背。
顔も性格も悪くないのに、なぜか、異性が寄り付かない。

 

なぜ異性が寄り付かないのか、
強いて、その原因を推測してみると、
元来、内気なうえ、上手が言えない、あっさりしている。
その上、本人の弁では、

 

「おれは、メンクイだ!」と、のたまう。

 

おたがい、
40歳代くらいまでは、
「いい人いるのか?」と私が聞いたら、
「メンコイ人がいたら、紹介しろ」と答えていたが、
2人とも10%ぐらいの真剣さで言い合っていたような気がする。

 

私がハゲ、
彼が白髪の度合いがはっきりしだした45歳以降からは、
2人の会話からその話題は、
完全に『削除』のKeyが押されていた。

 

彼のプライバシー保護のため、
詳しい住所の記述は差し控えるが、
円山某所で古くから理美容を営んでいる。

 

初めて、散髪してもらったのは、
私が20歳代で宮の森のはずれに引っ越したころ。
引越し先の近くに彼の店があった。

 

もう10年ほど前になろうか、

 

彼がいつものように、
私の数少なくなっている髪にハサミを入れながら、
若い山岳ガイドの話をしてくれた。
その方は近所に住んでいて、
ちょくちょく、
来店してくれているそうだ。

 

大体、来店してくれる時は、
ガイドの仕事でヒマラヤに行ったり、
大雪に行ったりした直後が多いらしい。

 

話題は、といっても、
彼は聞き役で、
どういう人を連れて行くだの、
ヒマラヤのトレッキングの話やネパールの様子などを
ポツポツ言ってくれるそうだ。

 

彼は人の話を真剣に聞く。
が、
彼の話し方はセンテンスが短い。
その上、余韻がのこらないしゃべり方だ。

 

「どうも~」でなく、「どうも」。
「それでどんな感じだったのですか?」でなく、「それで、どうした」になる。

 

おそらく、
山岳ガイドをする人は、
おしゃべりだとか、
あいづちを上手に打つタイプは少ないと思う。

 

そうだとすると、
2人の会話は短いセンテンスの言葉が空中を行ったり来たり?

 

テニスでいえば、
長いラリーが続くのでなく、
バシッ・バシッとサーブとスマッシュで終わり。
それでも試合はつづく。

 

そのように会話がつづいていくのだろう。

 

 

今日、
「大雪山系、トムラウシで、
登山者が頂上で寒さのため、
動けなくなって救助を求めている」
というニュースを聞いた。

 

時は2009年7月16日。

 

札幌市内を2輪のマイカー(自転車)で走ると、
ここちよい、さわやかな風が迎えてくれる時季なのに、
「今日はエライ、寒い!」。

 

山はもっと寒い。
まして、大雪山系。

 

 

私の趣味の一つ。
山スキー(ここ10年間行けない)。
シーズンの終わり、4月には羊蹄山の頂上から滑る。
実態は、ころげ落ちる。

 

こんな経験から私は想像した。
2000m級(本州では3000m級に相当)の山に、
上級者でない中年以降の登山者が登る場合は、
どういう準備、
日程、装備をするのかな?
現地を案内するガイドはどれくらいのレベルの人かな?と。

 

また、
私はこのニュースを聞いて、
自分の仕事と山岳ガイドは似ているんじゃないかと思った。

 

山に登ることは一般の人にとって、非日常的なこと。
新築住宅・新築マンション、中古住宅、中古マンションを売買するのも、
一般の人にとっては、非日常的なこと。

 

あとで後悔しないためには、
豊かな経験、
あらゆる知識、
冷静な判断・決断などを備えている同伴者が不可欠。

 

無事に下山するためには、
優秀な山岳ガイド、
住宅を売買するには、
優秀な住宅ガイドが必要ではないか?

 

となると、
「私は優秀な住宅ガイドでいるべきだ!
このことが私のできる社会貢献だ」の結論を得た。

 

ついつい、仕事と重ね合わせて考えてしまった自分がいた。

 

 

そういえば、もう一つ思い出したことがある。

 

やはり、10年前ぐらいの話だが、
彼から相談を受けたことがあった。
「隣の住宅が売りに出すそうだ。
買いたいけど、
売値が高いのさ。
どうしたらいい?」
だった。

 

「将来、床屋をやめたとき、どんな生活する?
今の土地は15坪ぐらい?
隣の土地を合わせたら60坪ぐらいか?」
と聞いた。

 

彼は「土地は大体そんなもんだ」と答えた。

 

「じゃあ、多少高くても買ったほうがいいぞ。
将来、なにかあったとき、
その土地が助けてくれることがあるぞ」
と言ってあげた。

 

「分った。買う。あんた、全部の手続きをたのむわ」
ときた。

 

仕方ないから、
資金から売値交渉、
売買手続きまで全てをやってあげた。

 

今、おもえば、
彼は私という優秀な住宅ガイドをつけていたんだ。
彼は、口には出さないが、思っているにちがいない

 

「私がいたことを髪に感謝している」と。

 

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